626人が本棚に入れています
本棚に追加
/58ページ
深津が通話を終えて面会の取り付けに成功した頃、今度はそれまで黙っていた琴子がエプロンをテーブルに置き、店のドアを開けて化け物へと歩み寄った。
「あんなぁ、大蛇様。若い子が好きっていうんは分かりますけど、大ちゃんはうちにとっても大事な子なんです。狙うんやったら、せめて私にして下さいね」
という言葉は優しく、勇敢で、思わずまさるだけでなく、塔太郎も深津も感動した。
が、目の前でそう言われた化け物は、琴子に怒るどころかいかにも不味そうな顔をしてみせ、「お前なんかいらない」とでも言いたげに舌を出した。
途端に琴子は頭に血が上って化け物をひっぱたき、
「アンタあたしの何が嫌やねん!?」
と、間髪入れず、千切るほどに両頬をつねり始めた。
喧嘩勃発である。
最初のコメントを投稿しよう!