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まさるの時の記憶がおぼつかない大に塔太郎が事の顛末を語ると、彼女は協力してくれた下光比賣命へお礼を言った後、
「良かったですね、塔太郎さん!」
と、花が咲いたような笑みを浮かべた。
塔太郎がまた、彼女への返事に詰まっていると、庭の隅に置いていた車から今村が「おぉーい、おぉーい」と飛び出していた。
「やったんけ!? どうなんや、もう大丈夫なんけ」
「はい。計画通りに人形を召し上がったのち、おん身を引いて下さいました」
「ほんまか、ほんまやろな」
「はい」
塔太郎の答えを受けつつも不安そうな今村に、下光比賣命がふんわりとピースサインする。
確固たる安全を確認した今村は途端に、表情をくるっと変えて塔太郎の肩を叩いた。
「ようやってくれた! お兄さん若いのに大したもんや!」
「いえ、俺は何も……今村さんの作って下さった人形のお陰です。素晴らしい子達でした」
「そらぁ、豆かなちゃんの命かかっとったんや。人形でも何でもこしらえまっさ。せやけど、人形に命吹き込んでくれたんは女神さまやで……」
「はい。令状を出してくださったのも……」
塔太郎と今村、二人の男は揃って下光比賣命に頭を下げる。
最大の功労者である女人守護の女神は嬉しそうに、
「あら。ええ男二人にかしずかれるなんて光栄やわぁ。帰ったら、お姉さんらに自慢せな」
と、笑っていた。
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