四~決着~

16/16
前へ
/58ページ
次へ
「いや、そういう気分じゃないんすよ。女の子の事は……今は、あんまり考えたくないっすね」 「何で。振られたんか」 「ま……そういう事にしといて下さい」  それをどう捉えたのか、おっちゃんは塔太郎に対して「ほうか」とだけ言い、 「まぁネギおまけしたげっし、たくさん食うて、たくさん寝たらええわな」  と、ネギを山盛り乗せ始めた。 「えっ、肉じゃないんすか?」 「そらぁ追加料金やで兄ちゃん。ワシら、これでおまんま食うてんにゃさかい」 「ほんなら肉も下さい! 払うんで」 「おっ! おおきに。ありがとう! ほんなら肉もサービスしたるわ。ビールは?」 「すんません、パスで」 「飲みぃな~」 「いやいや、仕事からの直帰なんすよ」 「あっ、ほんならやめた方がええな!」  おっさんは黒光りする肌に、がははと汚く笑いながら肉を山盛り乗せ始める。 適当で、あまりにも男臭い光景である。しかし今の塔太郎には、それが良かった。  京都の夜は百花繚乱でなお美しく、その色香は、人々を魅了し続けている。  桜の花びらがするりと数枚横切っていったが、塔太郎は、気がつかなかった。 (終わり)
/58ページ

最初のコメントを投稿しよう!

641人が本棚に入れています
本棚に追加