さよならは言わせない

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 一番近いコンビニは、歩いて五分、追いつければいいが、いくつか道があるからすれ違う可能性もなくはない。が、最終的にはコンビニで会えるだろう、と真琴は踏んだ。  長袖だが、夜は少し肌寒い。夏はとっくに遠ざかって、そろそろ空は冬仕様だ。通りかかった公園の木は、落ち葉を散らし始めている。ざっと吹いた風に、さらに空へと飛んでいく。変な感傷がよぎって、顔をしかめた。  すぐに追いつけるかと思ったが、コンパスは向こうの方が長いせいか、小走りでも背中はなかなか見えない。もう道のりは三分の二を切っている。  苛立ちつつ、一回家に戻っていないか確認することを思いついた。我ながら、相変わらずちょっと手際が悪い。  歩きながらスマホに指を滑らせて、耳にあてた。そのまま三歩進んで。 「――」  コンビニは、窓越しに煌々と光を放っていた。光源は、通る人やガードレールを眩しく照らしている。うち一人が、修也だった。  黒いジャケット。黒のジーンズ。部屋着ではなかった。髪も、濡れていない。  肩には、通学に使っている大き目のリュックがあり、重そうに膨らんでいた。  耳には、およそ家族の電話にかけたときには聞けないはずの、無機質な電子の声が入ってきていた。 『――になった電話番号は、現在、使われておりませ――』  もう一歩、進んだところで、足が止まった。じっと見ていれば、視線に気づいた修也が、はっきりと真琴を見返していた。  笑っていなかった。  ひどく、真剣だった。  恐る恐る、耳からスマホを話して画面に目を落とす。よく使う項目は、家族が固まって並んでいるから、間違えた。  間違えた先は、『修也』になっていた。  もう一度、顔を上げれば。 「……ばれちゃったかぁ」  へらっと笑み崩れた顔が、あった。
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