導入部

1/1
前へ
/2ページ
次へ

導入部

 目が覚めたら、屋外階段の踊り場だった。  メガネのずれたぼやけた視界だが、目の前に真っ黒い「モノ」がいることには気づけた。  「起きたか、あんちゃん。あんた階段上から落ちたんだよ。まだ寿命じゃないから連れてかなかったけどな」  ドクロ面の黒ローブは、胡散臭い声でそういった  その時から、僕の世界には「変なもの」たちが登場するようになった。  路地裏からぬうっと。電柱からバサバサ。物陰からケタケタ。  机の下に潜んだり、テレビを逆さに眺めたり、ショーウインドウに入り込んだり。  人間の話に耳を傾けたり、見えやしないのに追いかけたり、思いつきでいたずらしたり。  不気味で、不思議で、不格好で。生きることにつかれた、この世に生きる人間と「変なもの」たちの織りなす現代ファンタジー。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加