第3章

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 雨は夜通し降っていた。  翌朝、加世子が朝食を作っていると谷本が居間から台所を覗き込んだ。  「おはようございます」  「あ、おはよう」  軽く挨拶を交わして谷本は居間でテレビをつけ、加世子は台所で朝食を作った。  そして二人で淡々と食事をした。  食事を終えると加世子は普段よりのんびりと家の中の掃除をした。  空気を入れ替える為に縁側の窓を開けた。  庭に並んだ植木鉢が濡れていた。  昔は趣味で植物を育てていたが今は空っぽの小さな植木鉢が並んでいるだけの地味な庭に雨が静かに降っていた。  しばらくして窓を閉め、カーテンも閉めた。  居間では谷本が本を読みながら寝転がっていた。  「昨日も本を読んでいたの?」  「はい。退屈でしたから」  「そうよね」  しばらく間を置いて加世子は訊いた。  「それにしてもわからないわ。あなたみたいな人が人を殺すなんて」
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