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別な男性の声がいきなり鳴った。
「こちら戦闘ヘリ加3号機長、中嶋中尉だ。きみがいるあたりは間もなく延焼区域にはいる。風上に向かって撤退しろ。きみの副官はわたしたちが全力で捜索する。きみは自分の安全を第一に考えるんだ」
上空にいるヘリコプターの搭乗員は大切なことをひとつ忘れていた。最初から知らないのかもしれない。あの友の重要性だ。自分だけでなく、進駐軍全体、ひいては日乃元皇国のために、ジョージになにが可能なのか。
「ぼくの命とは比較になりません。菱川少尉がいなければ、来る本土防衛決戦での勝利はおぼつきません。彼は『須佐乃男』作戦の要(かなめ)なんです。ぼくの命と引き換えにしてもいい。菱川浄児を助けてください。ぼくも地上からいきます」
機長が叫んだ。
「貴様、死ぬぞ。菱川のことはまかせておけ」
「いや、まかせておけません。ジョージはぼくの親友だ」
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