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七三頭に、白い顔、一重の細い眼。緊張した頬に、大きすぎるワイシャツの襟が食い込んでいた。その上に羽織った黄緑色のカーディガンは逆にちょっと小さすぎ、袖口が窮屈そうだった。針筵の頭に、なんだかノートの落書きのような顔だな、と失礼な感想が浮かんだ。
そのうち、巨大猫とめきちがゆさゆさとやってきて、彼の靴とズボンの裾の匂いをあらためた。検分が済み、巨猫が去ると、ふっと葉巻の香りがただよって探偵が現れた。
依頼人は女性が写った一枚の写真を探偵に差し出した。そして札の入った封筒を内ポケットから取り出し、母を捜してください、と言った。調査はもっぱら針筵が担当した。鬼子母神近くのアパートに一人で暮らしている事を調べ上げ、報告書を仕上げようという段階で依頼人は死んだのだ。針筵にしてみれば自分のクライアントだったわけで、事件にこだわりたくなるのも無理はなかった。
「あの母親に関係あるんですかね?」
「さぁねぇ。あるかもしれないし、ないかもね」
「でも母親を捜してウチに来た。母親が見つかったと同時に殺された…関係あるんじゃねえですかい?」
「予断は禁物だよ、針筵君」
「ういっす」
「とはいえ、まずは鬼子母神の母親だな」
「なーお」
最後はとめきちが返事をした。
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