0人が本棚に入れています
本棚に追加
コウはもう、私の傍にいてくれない。
考えただけで涙が出そうになる。しかし、それをグッとこらえる。
しばらく毛布に顔を埋めて気持ちを落ち着かせると、スマホを取り出しメッセージを打つ。もちろんコウ宛てにだ。
『今度の日曜、一緒に出かけない?』
せめて、その日だけはコウと一緒に過ごしたいから。
今度の日曜、つまり私の誕生日。
コウは私の誕生日なんて覚えてないだろうけど・・・。
送信するとすぐに返信が来た。そこには簡潔にただ一言、こう書かれていた。
『いいよ』
今度ばかりは、涙をこらえることが出来なかった。
日曜日。この日は快晴だった。
いつも以上のおしゃれをして、近場の公園でコウと合流した。
「今日はちょっと行きたいところがあるんだ」
「えっ、どこどこ?」
興味を持った私はコウに尋ねるが教えてくれない。
「行ってからのお楽しみ」
そう言って歩き出そうとしたコウだが、すぐに立ち止まって尻ポケットからスマホを取り出す。着信でもあったのだろうか?
コウは画面を見ると、一言断ってから電話に出た。なぜか私から距離をとって。
そして通話が終わったかと思うと、少しあせった様子で駆け寄ってきた。
「わるい、急用だ。でも、すぐに戻るから。ここ、ここで待っててくれ」
それだけ言うと、どこかへ行ってしまった。
最初のコメントを投稿しよう!