【4】

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その週はずっと最悪で、これ以上の最悪は一生ないくらい最悪の1週間だった。ようすけもはじめくんも佐々木くんも真木さんも、みんなブラックホールに惹きつけられてた。1週間が終わるのに、まだみんな夢中だった。意味がわからない。来週から「ブラックホール係」を作るってようすけが言ってた。毎日交代でブラックホール入りの瓶を持つ係。けんちゃんも週の最後にはみんなに瓶を触らせるようになった。ただし「慎重に扱うように」とうるさいくらいに釘を刺していた。みんなが馬鹿に思えてきた。うんざりしていた。僕だけ仲間外れになった気がした。仲間になろうとも思わないけど。でもやっぱり面白くなかったし、早くブラックホールなんてみんな忘れてしまえばいいのにと思った。 夏休みが終わって、けんちゃんがブラックホールを持ってきてから、僕は学校が楽しくなくなった。昼休みもサッカーをする人がいなくなった。みんな瓶の中のブラックホールを眺めてる。中には何も入ってないのに。振っても音はしないし、覗いても向こうが歪んで見えるだけなのに。他のクラスの子はそのクラスの友達とサッカーしてるから、混ぜてもらうのは気が引けた。僕は校庭の隅の記念碑のところに座って、昼休みが終わるのを待った。「居場所がない」って、4年生の時、棚橋くんが言ってた意味がちょっとわかった。いじめかな、と思ったけど、いじめじゃない。殴られてもないし、無視されてるわけでもない。悪口を言われてるわけでもない。自分から距離を置いてるだけで、僕も瓶の中のブラックホールに吸い込まれれば、いいだけなんだけど、それはなんか嫌だった。ムカつくから。このまま3月まで、ひとりで座ってるわけにもいかない。 だから僕は、ブラックホールを消すことにした。
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