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5限目、金曜最後の授業は体育だった。朝から雨が降っていて、体育館でドッジボールをすることになった。僕は体育係だから、みんなが着替え終わった後に、最後に教室を出て鍵を閉める。これ以上ないチャンスだった。 教室の窓から外を見ると、雨に打たれてケヤキの木が揺れてた。板張りの床は湿っていて、色がいつもより濃い。女子は更衣室で着替えてたから、教室には男子だけがいた。ようすけがグズグズしてたから「早くして」って言ったら、「ごめん」と言って走っていった。廊下は濡れてて滑るから、気をつけろ、って言ってあげればよかったけど、その余裕はなかった。僕はブラックホールを消さなきゃならない。 廊下をちょっと覗いて、誰もいないのを確認した。チャイムが鳴るまであと5分ある。僕はけんちゃんの机のとこに行った。後ろから3列目、窓際から2列目。机の上には綺麗に畳まれた制服が置いてあった。瓶を探してみたけど、見当たらなかった。服の下にあるかなと思って、慎重に探したけどない。ブラックホール係は来週からだから、けんちゃんの机に必ずあるはずだった。僕はお父さんと映画で観た、外国の探偵みたいに腕を組んで考えた。そして思いついた。けんちゃんはいつも制服を体操着入れにしまってた。きっと体操着入れの中だ。僕は机の横に下げてあった、水色の袋に手を伸ばした。
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