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「シジェ、紳士だよね」
「やめろよ気持ち悪い。お前女とか言い出すなよ? 今度ゲーム大会出るんだろ?」
「出るけど。それがなに? 女じゃいけないの?」
僕は女声が出せるのだ。
「絶対やめろその声」
「笑った? でもいいだろ性別なんか。強けりゃいいじゃん」
「まあな。じゃ、雨には気を付けろよ。始めるか」
都市戦。マップは狭い。裏の取り合い、真後ろに回り込む勝負に成る。
隠れ続けてもシジェは「ちっくしょ根性あんなぁ」としか言わない。
見えなくなるか。裏を取るか。
本気だ。うろうろ歩けは即死だ。
中学二年。僕はゲームは2年前から始めた。元々向いてたのかも知れない。すぐ成績は上がった。
シジェはもっと年上だろう。裏の裏まで読んで来る。
緊張が高まる。もうシジェは有利な位置まで移動した筈だ。決断が早いのが特徴だ。
「……えっ」
いきなり通信が切れた。
「何だよ」
と言ってる間に電気が消える。テレビが動いた。僕は浮き上がったタンスに巻き込まれるように、床を流された。
よく覚えていない。
真っ暗だ。
手足が動かない。泥だろうか。呼吸は出来ている。
出来てなきゃ死んでる。
何かに挟まれた? タンスが上にあるとか。
まだ水が流れてる音がする。
頭もぶつけたようで痛い。
嫌だな。こんな風に死ぬんだ。両親が強運の持ち主だって日頃言ってたのがよく分かる。
乗りそこなったバスが事故で、そこで出会って、とか。冗談としか思えない。
僕は。
僕には何がある。
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