完璧

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完璧

 入り組んでいる道を歩いてようやく着いたビジネスホテル。ネットで予約して支払いも済ませたはずなのに、名前を告げると予約がないという。  フロントの女性は、冷静そのもの。思い当たるふしがある、といった様子だ。 「お客様、予約の画面を確認させて頂いてもよろしいですか」 「はい」  俺は慌てながらスマホを操作して、旅行サイトの予約画面を出して見せた。 「お客様、こちらはプラチナスケッチホテル東西でございます」 「はい」 「お客様が予約されているのはプラチナスケッチホテル南、でございます」 「えっ」  プラチナスケッチホテル南は、ここから歩いて30分はかかるという。タクシーを呼んでもらった。もう俺に歩き回る体力はない。 「お待ちになられている間に宿泊者名簿を書いて頂いてもよろしいですよ、あちらでも同じ紙を使用していますので」 「書きます」  俺はペンをとった。  ロビーで待たせてもらっている間、汗をかいているためか、小さい虫が寄ってくる。もう秋なのに。     
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