勇者は少年を掬います

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 B+ランク  勇者  レイティシア  如何いう理屈でかリシファの眼前へ浮かび上がった情報と、今正に闖入者ことレイティシアと名乗った少年が口にした言葉に差異は無い。浮かび上がった文字にはより詳細な情報が書かれているが、スキルがどうの、称号がどうのと言われても正直ピンと来ないのが現実である。  しかしそんなリシファでも判断出来る事は、此の情報量が凄まじいという事。つまりレイティシアは見た目こそ貧弱で、とても強そうには見えないが、積み上げた実績があるのだろう。  其れにしてはB+とは少し心許ない様にも思えるが。 「実力者だって名乗れる様になったくらい、って言う割にB+っつーのは今一つだ、とでも思ったか?」  悪戯気な笑顔を浮べて胸中を指摘され、思わずどきりと心臓が嫌な跳ね方をした。  眼前の文字群の中に“読心術”を見付ける。横に記された数字もなかなかのもので、嗚呼成る程と納得しかけたところを、 「ああ、スキルは使ってねぇよ。お前が結構分かり易かっただけ」  追撃を喰らってしまった。  今迄に分かり易いと言われた事があっただろうかと考えようとして、今迄に此れ程長い会話をした事がなかったと思い出す。  人を見れば殺すか、リシファを刺激せぬ様距離を取るか。  村人との距離間はリシファにとって快適であったものの、会話をするという行為に於いては成る程、至極不向きな環境でもあった。  惨殺に対する説教や知った様な評価は疎ましかった為、別段不便には思わなかったが。  オレって分かり易い?と先程殺そうとしていた少年に訊ねようと振り返れば、如何やら強い驚愕と恐怖から復活したらしい。何時の間にかこつぜんと姿を消していた。  仕方が無い。取り敢えず確認出来る相手もいない為、今は分かり易いという評価を素直に受け止めておくとして、リシファは先の問いへの答えとして首肯した。  実力者と言えば、其のランクはAとかA+である印象だ。  尤も勇者のランクが何処でカンストとなるかはリシファには分からない為何とも言えないが。ただ少なくともB+なんて半端な値ではないだろう。
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