勇者は少年を掬います

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「勇者のランク分けは結構シビアでな。マイナス、無印、プラス、アルファベットが1つ若い物に変わってまたマイナス……っつーのを繰り返してくんだけど、Bランクで勇者としては十分、十全だって言われてんだよ。一応SSS+迄測定出来るらしいけど、其処に到達してんのは伝説の勇者クラスだけじゃねぇか?」 「ふーん。じゃあB+以上は十二分ってトコっすかねぇ。で、其の勇者にしては十二分なアンタに殺戮を阻まれたなら、其処迄落胆しなくても良い、と」 「それ、オレが自分で答えたらとんだ自信過剰じゃねぇか……」 「そっすか?B+が勇者として十二分なんでしょ?事実は事実として述べれば良いと思うっすけど」  何処か脱力した様に言われたが、其の理由が分からない。少なくともリシファは自身の実力を正しく判断しているつもりである。  今迄に、本当に今の今迄に、リシファの殺戮を止められた第3者、逃れられた被害者は存在しなかった。だからこそリシファは自身の殺戮に関する腕を、自身でも買っている。  だからこそ自信過剰じゃねぇかと脱力しているレイティシアの気持ちは、まるで理解出来ない。尤も今迄に誰かの気持ちを理解しようなどと酔狂な事、夢にも思わなかったが。 「……まあ、落胆する必要はねぇよ。其れにBランクの人間は其れでも何人か居るが、後にプラスが付くだけで人数もガクッと減る。もしもお前がB+でもなけりゃ太刀打ち出来ない相手なら、阻める人間も早々いねぇだろ」 「ふーん。其れを聞いて安心したっす」  殺戮する為の腕を磨こう、実力を高めていこうとはあまり思わないものの、思う様に惨殺出来ないというのは其れなりにフラストレーションが溜まるものはある。現状が良い例だ。  ならば自身の健全な精神状態、精神衛生の為、殺戮妨害要因があるのなら把握しておくに越した事はない。  幾ら実力向上に思い入れは無く、熱心でもないと言っても、レイティシアの様に阻害出来る人間が多く居るとなれば、リシファとて実力向上を算段に入れる必要があった。  尤も屍骸を重ねるにつれ、確かに腕は向上していたが。  1人納得するリシファに対し、レイティシアの方は何か言いたげに此方を見つめている。最早凝視せんばかりの勢いだ。  リシファから奪った小刀こそ未だ手の中だが、相手に殺意の様な物は感じられない。其れでも凝視されているというのは、あまり落ち着く物ではなかった。
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