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「オレの顔に何か付いてるっすか?」
先程の意趣返しも含めて問い掛ける。とは言え、此処でリシファが首を傾げてみせても似合わない自覚は十分にあった為、ただ問い掛けるに留めておく。
果たして其の意図は正しく伝わったのだろう。レイティシアは素っ気無く首を振ってみせた。
「お前の顔には何も付いてねぇよ。強いて言えば、オレの脳内から1つの考えがこびり付いて離れない、ってあたりか」
「なんすか?」
「お前の殺戮を阻める人間は早々居ないだろうさ。でも、オレは其れを阻もうと思う」
「……は?」
驚愕した。驚愕した。本当に驚愕した。
此の少年には驚かされてばかりである。初めて殺戮を阻まれ、初めて会話と呼べる物を交わし。
そして、事情を知る村人の殆どはリシファを刺激せぬ様な距離感を保っていたにも関わらず、リシファの前で堂々と殺戮を阻むと言ってみせた。
惨殺してやりたいという苛立ちよりも何よりも先に、驚愕がリシファの胸中を支配している。レイティシアは何を言っている?何を考えている?正しく、混乱の最中へと突き落とされた。
「お前、勇者になってみねぇか?」
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