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声を上げたのはパーティの中で最も頭脳戦に優れ、索敵や鑑定スキルにも秀でた者。とは言ってもあくまで初級に毛が生えた程度のパーティである為、其の発動には条件・制約が多いが。
それでも此のパーティの中では抜きん出ている事に変わりはない。今やすっかりシルエットが窺える迄に近付いた人影を見据えて、彼は鑑定魔法を此方へ向かってくる人影へと掛ける。
全てのステータスを覗き見れる程熟練度もレベルも高くはない。しかし此の距離まで近付けば、必要最低限のデータ……名前と属性、大体のランクといった、ギルドに行けば容易に閲覧出来る程度の物……を覗う事は出来た。
尤も隠匿の魔法を使われていれば其れは叶わないのであるが、ギルドで自然開示される内容にまで隠匿魔法を使用している人物は少なく、其の場合は大抵やんごとなき身分のお方か、裏通りにて頂点、或いは其れに近しい凶悪な者かである。
前者に類されるお方が護衛も無しに裏通りに来る筈もなかろう。そうなれば、此の鑑定が不発に終わった時点でパーティ壊滅も同義である。でも、もしかしたら。
彼は抱いた違和感に縋る様に、鑑定魔法の結果を全員が共有出来る様に開示。果たして、其処には。
A+ランク 勇者 リシファ
至極簡潔で、あまりに単純で、鑑定魔法の結果というにはお粗末で。
しかしそれでも、パーティメンバー全員が胸を撫で下ろす結果が、安堵のあまり脱力さえしてしまう結果が表示されていた。
裏通りの住人ではなく同じ勇者。それもA+ランクと言えば、Bランクになれば十分と言われるクラス分けの中でなかなかに上位である。
ギルドや王族の要請で、B+ランク以上の勇者が裏通り社会に交渉、或いは粛清に入るというのはギルド内でも有名な話である。今此方に来ているリシファという名らしい勇者は、恐らく其の依頼を終えた帰りなのだろう。
「良かった!助かりました!!」
「私達、魔獣に追われて。魔獣を撒けたんですけど、逃げる過程で裏通りに迷い込んでしまったんです」
「もしよろしければ、表通り迄一緒に戻ってくれませんか?」
顔立ちも十分に見える距離迄リシファが近付くなり、口々に訴えた。
救ってもらって当然だとは思っていないものの、恐らく断られる事はないだろうとパーティ内の誰もがもう、助かった様な気になっていた。
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