1人が本棚に入れています
本棚に追加
それでも、試衛館に住み込み、近藤の反対を押し切って京についてきたのは自分の意思だ。
近藤に認めてもらえるように、何度も先頭だって剣を振るってきた。
町娘の姿に憧れたことがなかったと言えば嘘になるが、後悔をしたことはなかった。
「ありがたきお話ではございますが」
きっと、苦虫を噛み潰したような表情をしていることだろう。
「お断りしとう存じます」
自分の返事のせいで、近藤が、この隊がどんな目で見られるのか、想像するに容易かった。
「そうか」
でも、その声音はすごく優しくて。
「だいたい、妾に欲しいってどういうことだよ」
自分だって女を囲っているくせに、そう言って笑うこの人は、おそらく自分の決断で救われているのだとも思う。
壁に掛けられた新たな隊服(源さんは窮屈だとボヤいていた)を、黒いなと思いながら眺めていた。
最初のコメントを投稿しよう!