1人が本棚に入れています
本棚に追加
3年サイクルで記憶がリセットされる男
ATTENTION!)一応特殊設定。好きな人を忘れるのがいやで、彼女を振った人のお話。
男性に絡まれていた女性を助けた。
女性が振り払った男の手が、頬に当たった。
女性がこちらを振り向いて目が合ったとき、出会ったときと同じの光景に吹き出してしまいそうだった。
公園まで手を引っ張ってきて、水道水で冷やされたハンカチを手渡されるのまで、記憶通りだ。
しかも、去年の誕生日プレゼントで。
袋を開けたときの彼女のように、あてつけかよ と言いたくなったが、今はそんな気分じゃない。
「さっきはどうも」
「いえいえこちらこそ。綺麗なハンカチを台無しにしちゃって」
視線を合わせたくなくて、ハンカチで目元を覆う。頬の痛みは、まだ引いていない。
「いいんですよ、元カレにもらったものなので」
差し上げます だってさ。どこで使うよ、こんな女モノ。
「ねえ」
手に、ペットボトルが握らされた。
足音がひとつ、遠くなる。
「俺のこと、覚えててよ」
「何それ、自分のこと振った男のこと、覚えてろって言うの?」
頬が痛む。
でもそれ以上に、ハンカチから滴がこぼれないようにするので必死だった。
「それでちゃんと、幸せになって」
服の趣味も、メイクも、変わったよね。悔しいけど。
「アホらし」
足音が遠くなっていく。人の気配がなくなる。
目元からハンカチをずらすと、日の光が眩しかった。
まるで、リセット初日のような。
「よかった...」
全部、吐き出すのをこらえられて。
女性は女性で、歩きながら「またね」って呟いてたら好みです(知らん)。
最初のコメントを投稿しよう!