二話「嫉妬アップ」

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「おい、見ろよ。あの黄色チーム。音楽し忘れ女のクラスだぜ。そういえばさっきの早い女、女の妹だってよ。バトン取り忘れて立ち尽くすんじゃね?」  大声でそんな罵声を聞かされる。他の罵声も鳴り響く。私は耳を塞ぎたくなる。 (大丈夫よね、冥土?先生のことは気にしないで走り抜いて。一位じゃなくてもいいから。先生はそれだけで嬉しいから)  しかし当の本人は列に並びながら寝ながら立っていた。 (起きなさいよ、あんたは) 「位置についてよーい、ドン!!」  スタートダッシュミスか。それでも懸命に真ん中を走るうちのチームの選手。しかし順位は徐々に降下してアンカーとして立つ彼女の頃には最下位だった。距離はアンカーの一周半の先頭が残り四分の一走ってるところだった。しかも彼女はまだ立ちながら寝ている。 「あぁ、あの子が一位になったら何してあげようかなぁ?だからさぁ……」  先生の言葉に完全に目が開く彼女。そしてバトンは近寄っていく。そしてバトン取りながら先生と同じ言葉を言ったのだろうか。 「好き勝手に言うなよ」と。  彼女は目に見えないスピードで一周目で切断したであろうテープを再び触れてゴールしたらしい。 「おい、半周しかしてないんじゃない?」 「現在、ビデオカメラにて判定中です。あっ……判定来ました。ちゃんと二回切っています。優勝です。優勝は黄色です!!」     
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