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「ただいま、ちよ」
「おかえり、たろ。わぁ、なんだか背が伸びた気がする。たろはまだまだ大きくなるね」
一度首に絡めた腕をほどき、小さな手がよしよしと頭を撫でる。
新雪が髪をさらさらと滑っていくようだ。
「ちよは昔から変わらないな」
「うん。やちよはずっとこの姿だ。自然に伸びることがなければ、縮みもしない。だってやちよは人間ではないからね」
昔から、八千代は自分のことを「人間ではない」と言っていた。
あっけらかんと言われるものだから「ああそうなのか」と受け入れていたが、この村を離れて生活を始めた今、しんみりと思う。
変わらぬ姿、不思議な感触、出会った頃から少女であり続ける八千代は、本当に人間ではないのだ、と。
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