彼女は掬われ、彼女は救われた。

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「例えば、本日表彰されておられるのは深雪(みゆき)さまです。ですが、深雪さま以上にこのプロジェクトに並々ならぬ思いで挑まれていたのではないですか? 自分が表彰されず、悔しくはないのですか?」 「……んー」  私の声は、社長に招かれ壇上に上がる深雪に対する同僚たちの拍手で、タイミングよくかき消される。  確かに、彼女の言うようにこのプロジェクトに並々ならぬ思いで、全力で挑んだことは事実。彼女自身、よく観察しているなとは思う。 「私は、このプロジェクトを成功させたかったの」 「愛花さま、だったら尚のこと……」 「でも、それはこのプロジェクトを利用する地元の方たちにとってメリットがあったと思ったからよ」 「……」 「私は、壇上でのスポットライトが欲しいわけじゃない。ボーナスの上乗せを目標にしていたわけでもない。キャリアアップが願いでもない」
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