パチンコライターの僕と彼

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パチンコライターの僕と彼

 僕と彼と仕事はパチンコライター。パチンコについてのコラムを書き、それをネット上に公開する事で原稿料を頂くお仕事だ。  ネットの世界での評価はとてもシビア。少しでも変わった事を書けば容赦無く叩かれるし、当たり障りのない事を書けば見向きもされない。そんな世界で、誰からも好かれる人気者になる事を夢見て、僕も、彼も、そしてその他多くのパチンコライターがしのぎを削っているのだ。  僕と彼は同い年。同じ出版社に所属し、同じ年にパチンコライターになったいわゆる同期という間柄。だから、僕は、他の誰よりも彼の文章に触れてきたし、彼を隣で見てきているのだ。二人三脚でパチンコライターとしての活動を行い、おそらく恋人よりも長い時間を一緒に過ごしてきた。パチンコライターになって五年、僕と彼との関係はこれからもずっと変わらないものだと思っていたし、僕だけが彼の本当の姿を知っているのだとも思っていた。  パチンコライターには原稿を書く以外にもう一つ、来店と呼ばれる仕事がある。文字通り、パチンコライターがパチンコ店に来店し、その店舗の宣伝を行うという仕事だ。パチンコ店はその集客効果に期待して、パチンコライターにお金を支払うのであるから、来店する当日にどれだけの一般客を店舗に集める事ができるのかが、パチンコライターの腕の見せ所となるわけだ。宣伝の方法は様々だが、人気者になればそのライターが来店するというだけでそのライターのファンが店舗に集まるし、そうでない者はその店舗がいかに客側が勝ちやすい優良店であるかをアピールしたり、動画を撮影してネット配信したりする事で宣伝を行う。特に動画配信については、店舗を宣伝すると同時に、パチンコライター自身を宣伝する事にもつながるので、動画をやりたがるパチンコライターは非常に多い。実際のところ、業界トップクラスのパチンコライターには動画配信で有名になった者もた くさんおり、この世界で一山当てたいと思う若手のほとんどは動画をやりたいと思っていると言っても過言ではないだろう。  そんな折、僕と彼は動画の仕事がきたと言われ、編集部に呼び出された。
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