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寺の奥の間ではここ数日、からっぽの机が一つ寂しそうにしている。
「かっちゃん、今日も将ちゃん来ないね。もう一週間だよ」
「ああ、将太な。いまは放っておくしかないよ。待ってるって、決めたんだし」
そのときだった。奥の間の襖ががらがらと音を立てて開く。そこには清々しい顔の将太が立っていた。
「将ちゃん!」
「おう、ミッツが気づくなんて珍しいな」
「いまちょうど休憩してたところでさ」
「俺な、ずっと考えてたんだ」
将太は部屋に入りそのまま床に正座する。克樹と光晴は自然と身体ごとそちらへ向ける。
「結局自分が何やりたいかは分からなかったけど、分かったこともあった」
克樹と光晴は余計な口は挟まずに続きの言葉を待った。時計のチクタクという音がやけに部屋に響いて聞こえる。
「何してるときが楽しいかって考えるとさ、俺はやっぱり克樹とミッツと三人で切磋琢磨してるのが一番なんだ。大会が今年で終わるとしても、いままでの目標がもうなくなるとしても、それだけは変わらない」
将太は伸びをするかのように両腕を上に伸ばし、その勢いのまま立ち上がる。
「なあ、俺たち三人が揃っていたらさ、大会なんかよりもっとすごいことできると思わないか?」
「また、何か見つけたのか」
「いや、それを探しに大学へ行くよ。もちろん、頭脳対決のあとにな。お前ら、どう思う?」
「決まってる」
「やったー!! 僕たちずっと一緒ならずっと最強だよ」
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