だれかの色の世界の夢

2/4
前へ
/30ページ
次へ
 その風景のあらわす意味は、先生たちにも、ぼくたち他の子どもらにもわからなかったのですが、すみちゃん自身はその意味をしっかりと知っているようで、ぽつりとこんなことをつぶやいていました。 ああ、またこの風景を見れてよかった…。 あたしが生まれてきたことの意味、そう、次に見るときは、どう運ばれるかわからないけれども、この手でなんとか形に…。 ひつじ人間…か…。 そうしんみょうにつぶやくすみちゃんに対して、先生たちはあっけらかんとして見つめるだけでしたが、ようむ員のおじいさんは、何か思い出したふうに、ちらと天を見上げたのです。  しばらくもの思いにふけっていたすみちゃんが、われにもどったとき、今度はいきなり、あたりが完全にまっくらなじょうたいになりました。 これは、だれの夢だろう? ぼくがそう問いかけたときに、そのときはだれも答える者がおらず、ただあたりはしっこくの世界とせいじゃくが続くだけでした…。 …。 今度は、さっきとは正反対に、まっしろな世界があらわれました。 ぼくがちらと横をむくと、うい先生がうっすらとなみだをうかべています。 けれども、うい先生はなにごともなかったかのように、すぐになみだをふきさり、りゅうちょうにしゃべりはじめました。 これは、ありい先生の“ゆめみごこち”の世界ね。 まっしろな世界は、教師(きょうし)としてのかがみ、タブラ・ラサの世界を、夢で体現(たいげん)できるなんて、とてもうらやましいわ。 そう言ううい先生の顔は、そのはきはきとスムーズに語られる言葉とはうらはらに、なんだかかなしげです。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加