1人が本棚に入れています
本棚に追加
/29ページ
「お前、唇から血が出てるぞ?」
「え、嘘?唇割れちゃったかな。最近乾燥しててやだよねぇ」
俺がリュックの中からポケットティッシュを取り出して手渡すと、微かに震える声と精一杯の空元気で、そんなことを言う夕陽。
俺は正直それを見て、少し怖くなった。
今にも涙がこぼれ落ちそうな瞳に、小さく震えてる肩。
そして冷や汗で前髪の張り付いた額。
まだこの小さい体は、悲鳴を上げることを、泣き声を上げることを拒むのか。
その小さな体に、どれだけの涙と叫びを、悲しみを抱え込むつもりなのだろう?
最初のコメントを投稿しよう!