ある冬の日の出来事

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夕陽の顔には危うげな笑みが浮かぶ。 「ははっ……まぁとにかくそういう事情で、小さい頃はお父さんと3人で暮らしてた。お父さんは、最低な男でね。借金沢山作って。僕達の面倒なんかほとんど見ないで罵倒と暴力。その後遺症で僕の背もこの通り、伸びなくなっちゃった」 俺なんかにはあまりにも重い、引きずり込まれそうに深い、夕陽という人間を形成した過去。 俺はそれを、黙って隣で聞いていた。 「でもね、中学生になったばっかりの頃借金の取り立てがなくなって、お父さんが帰って来なくなった。そして二日後に怖いお兄さん達がやってきて、大きな鞄を僕達に押し付けて帰って行ったんだ」 そこで1度夕陽は言葉を切り、大きく息を吐く。
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