ある冬の日の出来事

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「朝陽がいないなら、僕は生きてたって……!」 「夕陽!」 言葉を遮るように、少し大きな声で、夕陽の名前を呼ぶ。 すると夕陽は肩を震わせ顔を上げ、怯えたような目で俺を見つめる。 届いた。 俺の声は、ちゃんと届いた。 大切な友達に、俺の声は届いたんだ。 「それ以上は言っちゃダメだ。思ってても、思ってなくても、言っちゃダメだ!」 「でも、でも……!」 「でもじゃない!」 依然頬を涙で濡らし、夕陽は俺の顔を見上げる。 グシャグシャな泣き顔なのにその顔は腹立たしいほど整っていて。 いつもなら思わず目をそらしてしまうけど。 それでも今はしっかりと、夕陽の目を見詰める。
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