文字の雨

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監視員は毎日規則正しくキーボードを叩き、その小説を一字一句間違わずに打ち込む。するとUSBの差し込み口から”文字”が吐き出され、雨の様に罪人の頭から降り注ぐ。 言葉の雨に打たれる。肌に染み込んでくる。染み込んで、吸い込んで、脳を巡る。 「人生を変えるにはね、自発的な行動をさせないとダメなのよ。ある日降って湧いてくる”気づき”をきっかけにするのがミソ。だから記憶を改竄してもダメなの。こうやって根から侵食しなくっちゃね」 ワイドショーで得意げに語る検察官の顔がスライドし、実写VTRに切り替わる。 18歳の罪人に、活字の大雨が降り注ぐ。 愛と正義の時代小説に打たれながら、ひたすら「糞食らえ」と呟いていた。 (20150606『雨』)
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