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僕がさっきまでとらわれていたような、僕の知らない昔のことでも思い出しているのだろうか。
考えてみればタカハシの昔のことはあまり知らない。
恋愛にうつつを抜かすタイプには見えないが、それもわかない。
確かにタカハシに好意はもっているものの、今までどうこうなろうと自分から動いたことはなかった。
でも、なにかに夢中になっているタカハシを見て、僕の方を向いて欲しい、そう強く思った。
「ねえ」タカハシに呼びかける。
「んー」答える声は上の空だ。
「僕がなんで付いてきたか、ちゃんとわかってる?」
「心配だからでしょ」
「それはそうだけど、それだけじゃないっていうか……」
あまりにも僕がぐだぐだなせいか、星空から目を離さなかったタカハシが視線をおろしこちらに顔を向けた。
まっすぐに見つめられて逃げてしまいたくなる。
が、ふたりきりでこの星空で、なにか言うのにこれ以上のシチュエーションはないだろう。
「僕はもっとタカハシのことを知りたいっていうか、ちゃんといろいろ話したいっていうか」
情けないことだが、今の僕ではこういうので精一杯だ。
タカハシは一瞬、きつねにつままれたようにきょとんとした顔をしたが、すぐにニヤリと笑った。
「いいよ。何言うかと思った」
なにがおかしいのかふふふふふと低く笑っている。
「え、なになに」
今度は僕が聞き返す。
「なんでもない」
と言いながらも、タカハシは笑い続けている。
「なんだよ」言いながらも雰囲気が悪くならなかったことに安心する。
今はまだ、流星雨をふたりで見た、それで僕には十分だ。
見上げた空には星が流れ続けいていた。
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