近江の乱

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「それはいかん!半兵衛、弾正に薬を与えよ!弾正よ!そなたには六角に降伏勧告の使者に赴いて貰いたいと思うておる!今日はもう陣に戻り休むが良い!」 「…この体たらく…誠に…」 「気にするでない!ゆっくり休め!」 「…はっ」 松永弾正は青白い顔色のまま自軍の陣に戻っていった。 「殿、ちと苛め過ぎではござらぬか?」 「官兵衛、あれくらい釘をささねばあの者は動くぞ?」 「…これで策破れたと諦めてくれたら良いのですが…」 「あの者は隙あらば、何時でも動く。だが我らが隙を見せねば動く事はしない筈だ!」 「そのような者をなぜ?」 「官兵衛、あの者こそ戦を望む者の代表のような者だ!あの者を真に従わせれば先の世の平和が見えてくるとは思わぬか?」 「なるほど…」 「しかし…罪には罰を与えなければなりますまい…」 「それは大丈夫だ!しっかり考えておる。」 「しかし…六角と組みここまでの芝居をやるとは稀代の策士の名は伊達ではござらんなぁ…」 「いや…それを見抜かれた殿の眼力…」 「あの者が恭順して来た時点から見張りをつけておったのが幸いしただけの事だ!」 「その時点から警戒なさっておられたから…」
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