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「手をつけたとはヒドイな…」
「ああいや、あのロリロリな一年の若村咲ちゃんは現在進行中の浮気相手だが、オドオドしてたのは燿の従妹の桃園朝霞で、燿は何度も言い寄ってるが恋愛ベタでなかなか落ちない。で、最後のクールビューティーは三年で生徒会書記の六条美夜さんだが、ご覧の通り、ナンパな燿のことなんか眼中にないご様子だ」
歯に衣着せぬ阿倍野の言葉に、燿は眉根を寄せてひどく嫌な顔をしてみせるが、登也はその口を遮り、親友とあの三人との関係を簡単に説明する。
「なるほど。では、あの三人の中でつきあっているのは若村咲さんだけなんですね?」
「ん? ああ、まあ……そんな感じかな……」
登也の話を聞き、念を押すように阿倍野はもう一度、燿に尋ねるが、彼の返事はなんだか歯切れの悪いものだ。
「ちょっと待て。んじゃあ、あの二人とも関係持ってたのか!? んな話、俺も聞いてないぞ!?」
「あ、いや、朝霞はいまだにガード硬いけど、六条さんとは前にちょっとね……」
さすがに中条もそれに気づき、声を荒げて問い詰めると、燿は照れながら白状する。
「まさか、あの六条さんとまで……あの態度はどう見たって気のない感じだろ!? しかも、あのプライドの高い性格からして、そんなの詐欺だろ!?」
「そこはほら、去年つきあってた副会長の春宮さんとも卒業を期に自然消滅しちゃったし、きっと淋しかったんじゃないのかなあ……」
自分も知らなかったその新事実にやり場のない怒りすら覚えて詰め寄る登也を、燿はまるで他人事のように下手な言い訳をしてなだめすかす。言い訳というよりもむしろ、いっそう自分のゲスぶりを説明してしまっているようにも思えるが……。
「となると、他人の目を欺くために、わざとあんなつれない態度をとっていたというわけですか……で、僕らはいつまで門前でおしゃべりしているつもりですか?」
そんな二人のやりとりを他所に、阿倍野は独り何か納得したように頷くと、ここへ来た本来の目的を思い出すように燿達を促した。
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