23人が本棚に入れています
本棚に追加
「――ごめんなさいね、登也くんまでわざわざお見舞いに来てもらっちゃって」
チャイムに応対した執事に連れられ、これまた豪華で貴族のお屋敷のような寝室の一つへ通されると、天蓋付きの大きなベッドの上には、ツインテールをふんわりと巻いた、派手な顔立ちの美少女が薄ピンクのパジャマ姿で横になっている……無論、彼女が上野葵である。
「なあに気にするなって。親友のカノジョは親友だからな。で、調子はどうだい?」
「うーん…元気はあるんですけど、体がとってもだるくて。どうしても長い時間起きていられないんですの。それに毎日ってほど、眠ると怖い夢を見てしまいますし……」
いつもの如くチャラい口調ながらも優しい気遣いを見せる登也に、病床の葵はハニカミながら、どこか疲れているような息遣いでそう答える。
自分では元気だと言っているが、そのフランス人形のような目の下にはくっきりと濃いクマができ、あまり睡眠もとれていない様子だ。
「怖い夢? どんな夢ですか? 詳しく教えてください」
葵のその言葉尻を拾い、挨拶もせぬまま唐突に阿倍野が尋ねた。
「あの、こちらの方達は……」
突然、尋ねられ、葵は怪訝な様子で視線を恋人の方へ向ける。
「ああ、占いとかおまじないとかに詳しい友達だよ。女子ってそういうの好きだろ? ずっと家に閉じこもってるし、気がまぎれるんじゃないかと思ってね」
さすがに「医者も見放したから…」などと言うわけにもいかず、燿はそう嘘を吐いて二人を紹介する。
「ええ。まあそんなところです。夢占いでもすると思って、どうぞ話してみてください」
その嘘に阿倍野も乗っかり、改めて葵に気になった夢の話を尋ねる。
「はぁ……いつも同じ夢なんですが、恐ろしい顔をした女の人が目の前に現れて、わたしの首に両手をかけて、こうぎゅうっと絞めるんですの。それで息ができなくなって、もう苦しくてダメだってところで目を覚ますんですが……」
「なるほど……湊本先輩の日頃の行いからも予測はしてましたが、やはり思った通りのようですね。おおよその検討はつきました」
なにやら狐に抓まれたような顔をして小首を傾げながらも、彼女の語ってくれたその内容に阿倍野は何かを悟り、燿の方へ白い眼を向けながら大きく頷く。
最初のコメントを投稿しよう!