九十九匹の羊は

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「だったらなんで俺と付き合ってんだよ」 逆ギレもいいところだ、と我ながら思う。 しかし、ジュンヤは頬杖をついて、「そうだなあ」とぼんやり宙を見つめる。 お気に入りの動物の生態をこれから説明しよう、というときの顔に似ていた。 「やっぱりナオが好きだからだよ」 俺は、言葉に詰まる。 好きなのか? お前は、本当に俺のことが好きか? 「ほかの男と寝ていても?」 「うん」 「即答するなよ!」 「どうして? ナオがナオであることに変わりはないじゃない」 「そうだけどそうじゃない!!」 こうやって怒鳴るのも、もう何度めだろう。 ひどいことをしているのは俺なのに、なんで俺が泣きそうになっているんだろう。 見た目も性格も、ジュンヤよりいい男はいる。 誘い誘われる相手には不自由していない。 だからこその、この浮気回数だ。 それなのに、この、恐ろしく優しくて、同時に恐ろしく冷徹な男を、どうしようもなく好きだ、とやっぱり思ってしまう。 どうして。 そんなの、俺が訊きたいよ。 「どうして、怒らないんだよ……」 「ナオ、泣かないで」 ジュンヤの手が伸びて、俺の頭をそっと撫でる。 傍から見れば、泣いている恋人を慰める優しいパートナーだ。 ラブラブの同性カップルだ。 けれど、その温かい手が、俺には傷口をかきむしる手に思える。 残酷な手。 嫉妬して欲しい、と切望するほどに、その感情から遠い恋人に囚われていることを自覚する。 彼の手の中に、俺はいる。 〈了〉
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