4人が本棚に入れています
本棚に追加
「だったらなんで俺と付き合ってんだよ」
逆ギレもいいところだ、と我ながら思う。
しかし、ジュンヤは頬杖をついて、「そうだなあ」とぼんやり宙を見つめる。
お気に入りの動物の生態をこれから説明しよう、というときの顔に似ていた。
「やっぱりナオが好きだからだよ」
俺は、言葉に詰まる。
好きなのか?
お前は、本当に俺のことが好きか?
「ほかの男と寝ていても?」
「うん」
「即答するなよ!」
「どうして? ナオがナオであることに変わりはないじゃない」
「そうだけどそうじゃない!!」
こうやって怒鳴るのも、もう何度めだろう。
ひどいことをしているのは俺なのに、なんで俺が泣きそうになっているんだろう。
見た目も性格も、ジュンヤよりいい男はいる。
誘い誘われる相手には不自由していない。
だからこその、この浮気回数だ。
それなのに、この、恐ろしく優しくて、同時に恐ろしく冷徹な男を、どうしようもなく好きだ、とやっぱり思ってしまう。
どうして。
そんなの、俺が訊きたいよ。
「どうして、怒らないんだよ……」
「ナオ、泣かないで」
ジュンヤの手が伸びて、俺の頭をそっと撫でる。
傍から見れば、泣いている恋人を慰める優しいパートナーだ。
ラブラブの同性カップルだ。
けれど、その温かい手が、俺には傷口をかきむしる手に思える。
残酷な手。
嫉妬して欲しい、と切望するほどに、その感情から遠い恋人に囚われていることを自覚する。
彼の手の中に、俺はいる。
〈了〉
最初のコメントを投稿しよう!