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軟禁
目が覚めると、そこは俺の知らない場所。
赤と黒で統一された趣味の悪い部屋。
大きなベッド。
そして隣には、魔王。
この光景を見て、夢じゃなかったと少し落胆する。
まあ、半分以上は諦めていたけど。
頭の中は、何で俺なのだろうという疑問が渦巻いている。
俺じゃなきゃよかったのに。
でも、柚樹や他の人じゃなくて俺だったことに少し安堵していると言えば、お人好しと言われるだろうか。
ゼーレはどうしているだろうか。
俺の下僕達は、元気かな。
さっきから俺、現実逃避ばかりしているな。
自嘲気味に笑ってみても、誰も何も答えない。
・・・当たり前か。
魔王が起きないようにそっとベッドから出る。
近くに窓があったから、外を覗くと、まだ薄暗い。
窓の外には森が広がっていて、昨日までのことが、鮮明にフラッシュバックする。
いっそもうこの窓から落ちて死んでしまおうか。
そう考えたけど、そしたら柚樹に矛先が向かうかもしれないと思い、考えるのをやめる。
後ろで何か動くような気がして振り向くと、やはり魔王が起きていた。
『おはよう、柚花』
あいさつされるとは思っていなくて、戸惑いながら返事をする。
「お・・・おはよう、ございます」
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