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いくら願っても、俺は無力だ。
目の前で大切な人がズタボロにされるのを見ることしかできない。
泣いたら魔王の思うつぼだと解っていても、目から出てくる涙は止まらない。
苦しいのは俺だけでよかった。
なのに何でゼーレまで巻き込むんだ。
嫌だ。
お願い、ゼーレを傷つけないで・・・・・・
『はぁー・・・仕方がないなぁ。
柚花がお前を傷つけるなって言うから、今回は許してやろう』
『・・・ふ、ざけるなっ』
『せっかく我が見逃してやってるんだ。
さっさと去れ』
そう言うと、一瞬でゼーレの姿が消えた。
そして俺を拘束していた椅子も消えた。
『あーあー、こんなに泣いちゃって・・・
お前はそんなにあの魔人のことが好きなのかい?』
当たり前だ。
ゼーレと一緒に居た時間は少なかったけど、その短時間でゼーレは俺に沢山の愛を注いでくれた。
このクソみたいな世界で、初めて俺に愛を注いでくれた人だから。
だから・・・
「今後とも、ゼーレは傷つけないでください。
無論柚樹も」
『分かったから、睨むのはやめたまえ』
そう言って魔王は俺を横抱きし、城まで移動した。
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