第八章 別れ

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稀血であると知ってから数週間後、ラーメン屋へ訪れた。ずっとずっと気になっていたことが頭から離れず、どうしても確かめたくなった「いらっしゃいませ!里美さん、今日もいつものオススメで宜しいですか?」「はい、お願いします。それと・・・お仕事が終わったらお話をしたいのですが・・・」深刻な顔をして声をかけたので光一さんが何かに気付いたようだった。「・・・わかりました。もうすぐ閉店しますので少し待っていて頂けますか?」「わかりました。」今日が最後になるかもしれない。そう想うと、この美味しいラーメンが恋しくて仕方なかった。味わって食べよう。ゆっくり食べてスープまで飲み干した。今日、聴く事でお別れが待っているかもしれない。しかし、今日、聴かないと駄目な気がする。知らないふりして生きていくことはおそらく出来ないのだから。「お待たせしました、それで・・・お話と言うのは?」言えば急展開になるであろう。予想できない展開になるかもしれない。ここで引いたらいけない、勇気をだして・・・口を開いた。「私・・・稀血、らしいですね」言った瞬間、光一さんは目を丸くした。それから一呼吸おいて淋しげな表情をした。言うんじゃなかった・・・でも言ってしまった。後戻りはもう出来ない。「調べたんですか?」「はい、この間。輸血のキャンペーンをしていて、たまたま」「そう・・・ですか。」「それで!あの・・・」「何をお聴きになりたいです?」「あの・・・、・・・・・!光一さんは私が稀血ってなんで分かったんですか??」本当に聴きたい事は他に有る。けれど、この質問も気になっていたこと。「特技なんですよ、血の香りを嗅ぎ分けるのが。里美さんの血は良い香りがする、直ぐに稀血だとわかりました。」本当に香りなんだ・・・特技って・・・どういうことだろう?「香りのエキスパート・・・ソムリエ、みたいなものです。分かるんですよ、高潔な血、稀血・・・香りで直ぐに。質問は以上です?」それ以上は聴いてくれるな、この関係を続けたければ、という言葉が聴こえてきた気がする。でも、ここまで来たら止められない。
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