序章&第1話 求めしは勇敢なる者よ

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「筋金入りか!?筋金入りの馬鹿なのか!もう、お主に自由など無いのじゃ!これからお主は被験体として、死ぬまで実験の道具として使い潰されるのじゃ!泣いても、叫んでも、誰も助けてはくれぬ!何故、分からぬ!?褌一丁で両腕を縄で縛られて…その状況が何を意味するのか、考えた事は無いのか!?」 「え?それは『まだむ』が若い男を縛るのが趣味だから、今のうちに慣れておけって権兵衛さんが…」 「…もうイイ…お主の事はよく分かった…面談は終わりじゃ」 短い時間の中で、久礼という男の本質を理解したエルカ。看守に命じて久礼を地下牢へと送らせると、頭を抱えて机に伏せ込んだ。 「なんじゃ、あの馬鹿は…罪の無き者を殺さなくてはならないワシの立場を少しは考えよ…いや、これから沢山の無辜の民を殺さなければならぬのじゃ…たった一人の馬鹿の死に動じてどうする…うむ、死んで当然の者が死ぬだけじゃ…そう、人間なんぞ死んで当然…そうで無ければエルフの里にも被害が…人間の自業自得に、ワシが責任を背負う必要など…」 エルカはブツブツと、必死に言い訳の弁を自身に言い聞かせ、気を取り直すと残り八人の面談を再開するのであった。
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