序章&第1話 求めしは勇敢なる者よ

2/10
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/39ページ
【本編】 「これが今回の被験体、九名だ」 看守が連れてきた九人の流刑囚。その経歴を記した書類を客員教授のエルカが受け取ると、顔をしかめながらも目を通す。 ミスヴァルディア王国、王立魔道研究所の客員教授エルカは、褐色の肌に無数のシワが刻み込まれた三百歳を超えるダークエルフである。 『闇金剛石(カーボナード)のエルカ』の異名を持つ、闇魔法の老練家(スペシャリスト)であるエルカは、二年程前にその実力を買われて客員教授に抜擢されたのだが、当初はこれを拒否。 拒否した理由は三つ。その内の一つが、他の国から先に仕事のオファーがあったこと。二つ目が非常に危険の伴う研究だったこと。そして三つ目がミスヴァルディア王国の悪名…いや、国のトップである王女の悪名が知れ渡っていたからである。 故に客員教授は辞退すると申し出たのだが、拒否したところでそれを認めるようであれば、悪名など轟く訳がない。 エルカは故郷にいる家族を人質に取られ、強制的に王国へと連れてこられると、無理矢理に研究員として働かされる事に。 そう、人体実験と言う…(おおやけ)にする事の出来ない、非人道的な研究に携わる研究員として。     
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!