序章&第1話 求めしは勇敢なる者よ

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研究所に連れてこられてから早二年。エルカのストレスは限界に近づいていた。やりたくもない人体実験を強制されているのだ。ストレスが溜まらない訳がない。 エルカは闇魔法の使い手とは言え、無闇矢鱈に殺生をする趣味など持ち合わせてはいない。にも拘らずの人体実験。被験体の阿鼻叫喚が、いつまでも耳に残る。 それでも二年間、人体実験を続けられたのは被験体が罪人である事による、罪の意識の軽減があったからだろう。 当初は身元不明の孤児などを犠牲にするのが研究所の方針。それに異議を唱えて、エルカが罪人による人体実験を提案。 これによって無辜の孤児による犠牲者が無くなったのは、せめてもの救いと言えよう。 とは言え、人体実験を続ける事には限界を感じていた。罪人とは言え、身体の内側から爆発して死亡する様を、間近で観察するのだ。それも自身の研究結果として。 日に日に被験体となる罪人の数が増えていく。先月までは一ヶ月に十人程の被験者数であったが、今月は既に二回目の被験体が運び込まれている。一回目の八人と合わせれば、今月だけで十七人に。来月は更に増える見込みだ。 そうして運び込まれた流刑囚、九人の前でエルカが挨拶を始めた。     
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