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それから僕は、たくさんの写真を見てまわった。
そのうちの一つ、大勢の若者が笑って写っていた写真にマギーらしい女性を見つけていた。
もちろん、名前なんか書いてない。
けど、これはおっきい祖母ちゃんなんだ。
さっきは驚いて受け入れられなかったけど、今は嬉しく思う。
その夜は、クリスと僕はホテル内のパフで食事をした。
地元のビールとチキンウイング、サツマイモのフライズ(ポテトフライと同じようにサツマイモのフライも大人気)、ガーリックブレッドとシザーズ・サラダを二人でシェアすると注文した。
そしたら、気の利くシェフが普通なら大皿に一品づつの料理だけど、それをきれいに二人分の皿に分けてくれた。
「すごい、チップはずまなきゃね」
とりあえず、ビールで乾杯。
一気に半分ほど飲むとほどよいアルコールが胃にしみわたるのがわかった。
「お疲れさまでした、どうだった? この町」
「来てよかった。高祖父や曾祖母は戦争で、本来の平穏な生活を失ったけど、ここではそれほど惨めな思いをしないで地元の人たちと一緒にうまくやっていたことがわかった。安心したよ」
「よかった」
「もし、高祖父たちがこのままカナダにいたら、僕、カナダ人として生まれてきたかもしれないって考えた。母は別の人と結婚するから僕は生まれてこないって笑ったけど」
「そうね。どうなったでしょうね。姿形は今と別人でも、翔さんの魂はひいひいお祖父さんの子孫として生まれてきたと思う」
クリスって良いこというなあ。
カナダにとどまったとしても、英語を話す別の僕がおっきい祖母ちゃんを偲んで、やっぱりここへ来たような気がする。
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