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 生きづらいのはある意味アルファも同じだと朔は思っていた。カリスマ性があり、人を惹きつけるアルファだが成功しなければ価値がない。  自分の好きなことを見つけ、そのために生きて、やがて愛する人と出会って結ばれ子供に恵まれる人生。多少の妥協の中でもそれなりの暮らしができればいいというのはベータの幸せでしかない。  アルファはオメガと番って孕ませ、子供を生ませることが本能に刷り込まれている。また、オメガもアルファの子供を孕み、生むことが本能として刻まれているのだ。  さらに、アルファとオメガには『運命の番』と呼ばれる特別な繋がりが存在すると言われている。  一般的なアルファとオメガの番は『運命の番』ではなく、ベータ同士の夫婦と同じ恋愛感情に基づく結びつきだ。  『運命の番』は触れ合った瞬間に相手をそれと認識し、互いを激しく求めるのだが出会える確率は非常に低い。  そのため、すでに番っているのに『運命の番』に出会ってしまった場合には悲劇を生む。どんなに強く愛し合って番ったとしても『運命の番』にはかなわない。アルファが番のオメガを捨ててしまい、残されたオメガが精神を病んだり命を落としてしまった例が報告されているそうだ。
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