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御厨家を訪問する日曜日、朔は早朝に目を覚ました。
洗濯機を使うには近所迷惑だし、食材の買い出しに行こうにも店が開いていない。仕方なく通販番組を眺める羽目になってしまった。
朝食を摂ってからは、洗濯や一週間分の食材の買い出しに行っていたのであっと言う間に時間が過ぎてしまったが、待ち合わせの時間までが落ち着かない。
大学の課題をしようと教科書とノートを開いてみたものの一行も進まず、買ってきたフルーツゼリーの入った紙袋にばかり目がいってしまう。
緊張のあまり昼食は食べる気にならなかったので、そのまま待ち合わせの時刻に最寄りの駅前に向かうことにした。
指定された場所で朔が待っていると、大学構内をぶっちぎりで走った非常識な高級外車が目の前に滑るように停まり、左ハンドルの運転席から理真が顔をのぞかせる。今日も相変わらず機嫌が悪いらしく、朔は一歩後ろへ下がってしまった。
「大川くん、後ろに乗ってくれ」
助手席の理斗が理真の方へ身を乗り出して声をかけてくれる。
「えっと……失礼します」
朔が後部座席に乗り込むのを確認して、理真はアクセルを踏み込んだ。
車内では理斗が話しかけてくれたが、朔は理真の圧倒的な不機嫌オーラに気圧されてしまい、うまく話すことができなかった。
この凶悪なオーラを理斗は『兄バカ』と言う。アルファの朔を理央に近づけたくないのは解る気はする。しかし、家族がいない朔にはいまいち実感が伴わなかった。施設にいた頃には成長するにしたがって年下の子供たちの面倒も見るようになったし、彼らを可愛いとも大切だとも思ったけれど、それとは何か違うと感じる。
そんなことを考えている内に、車は豪奢な門を潜って御厨家の敷地に入った。
朔はまず家の大きさに目をみはり、その後、門から建物までの距離に仰け反る。
建物のすぐ手前で一度車を停めて理斗と朔を降ろすと、理真はガレージに向かった。朔は理斗に家へ入るようにうながされる。
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