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 やはり、そこに彼はいた。  今日は箱に入った菓子のオマケを手のひらの上にのせ、無表情のまま観察している。そんな彼の様子に口元をほころばせていた朔を呼ぶ声がした。 「大川、大川ってば」 「えっ」 「講義室にノート忘れてたぞ」  朔を追いかけてきたのは同級生の水野壮太だった。朔はかなりの長身だが、水野も負けないくらい背が高い。金色に染めた髪が渡り廊下に射し込む陽の光をきらきらと反射している。  名前も知らない男に見惚れ、気づかない内に笑っていた朔は慌てて表情を取り繕いノートを受け取った。 「何してんの?」 「いや、別に」  水野が朔の視線をたどるように外を見る。 「あれって同じ二年の『御厨(みくりや)理央』だろ」 「御厨理央? 水野の知り合い?」 「むしろなんでお前が知らないんだよ。あいつオメガだぜ?」
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