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「仕事が忙しいのよ。昨日から沖縄に出張で、やっと今会社の近くに着いたところなの」
『ああ、そうなの。わかったから、とにかく一度、顔見せなさいよ』
そう一方的に告げると、母は勝手に電話を切ってしまった。私は暗くなった画面を見ながら、ため息を漏らした。
「……麻倉。ひょっとして、今の電話、お母さんから?」
電話の時、母はいつも必要以上に声が大きくなるから、課長のいるところにまで、声が届いていたらしい。
「そうです。言いたいことだけ言って、さっさと切られてしまいました」
私は、肩を竦めそう答えた。
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