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買い物中は忘れていたのに、飲食店の連なる通りへ出た途端、空腹を憶えた。
もうランチには、ちょっと遅い時間だ。
私は気軽に入れそうなカフェを求めて、人ごみを掻き分け通りを進んだ。
雰囲気の良さそうなカフェを十メートルほど先に見つけ、そこに向かおうとした時だった。
「……え?」
私は、カフェの一つ手前にある店の、良く磨かれたショーウィンドウの前で足を止めた。
「なに、これ……」
肩にかけていた紙袋が、バサバサと音を立てて地面に落ちていく。
木製の額に入れられた、一枚の油彩画。
その絵の中に、無数のクリスマスライトの下、夜空を見上げ、一筋の涙を零す私がいた。
これは……クリスマスの夜、達哉から別れを告げられた直後の私だ。
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