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私は暫くの間、呆然とその絵を見上げていた。
……一体誰が、いつの間にこんなものを?
よりによって、失恋して涙を流している姿を描かれるなんて。
私は、羞恥と込み上げてくる怒りのせいで小さく震える手のひらを、きつく握り締めた。
とにかく、絵のことを訊いてみなくては。
視線を少し上へと向けると、レンガ調の壁から突き出たアイアンワークの看板に『ギャラリーK』とある。
私は、地面に散らばった紙袋を素早く拾い上げると、そのギャラリーの中へと進んだ。
「すみません」
呼びかけても、誰も出てこない。私は奥の展示スペースへと足を踏み入れた。
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