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「麻倉さん、実はあの絵を今回の個展に出したのは私なんです。作品をギャラリーに搬入する時、三浦のアトリエの隅に置いてあった絵をたまたま見つけて」
「夏希、そのことはもういいんだよ」
「いいえ、良くないわ。きちんと彼女に説明しなくては」
内山さんは毅然とした表情で三浦さんを遮ると、また私の方に向き直った。
「三浦は元々あの絵を表に出す気はなかったようなんです。アトリエでも個展用の新作とはきちんと分けて保管していた。でも彼が出し忘れたんだと勝手に思い込んで、私が他の新作と一緒にここに運ぶよう手配してしまったんです」
「そう……だったんですか」
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