予期せぬ再会

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 これ以上打つ手はない。頭ではそうわかっているのに、私はどうしても内山さんの提案に頷くことができなかった。 「……ごめんなさい、無理強いはできないですよね」  なかなか煮え切らない私に観念したのか、内山さんがとうとう先に折れた。 「麻倉さん、もう少しお時間をいただけますか? 私から一度お客様にお話してみますので。……それでもダメな時は、なんとか了承していただけないでしょうか」  一度出した絵を戻してしまえば、その顧客からの信用を失ってしまうかもしれない。それでも私のために動こうとしてくれる内山さんにの姿に、心を打たれた。 「お願いします。その時は、お受けします」  これが今の私にできる、最大の譲歩だった。
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